オフィス退去前のチェックリスト
オフィスの原状回復をスムーズに進めるため、退去6ヶ月前から当日までにやるべきことを時系列でまとめました。
この記事のポイント
- オフィス退去は 解約予告 6 ヶ月前から準備開始が基本(住居用より長い)
- 原状回復義務は住居より重く、スケルトン戻しを求められるケースも多い
- 業者選定・見積もり比較は 退去 3 ヶ月前までに完了させる
- 立会い当日のチェックリストを事前に用意し、合意書を必ず書面化する
オフィス退去の特徴と注意点
住居の退去とは異なり、オフィス退去では次の特徴があります。早めの準備が決定的に重要です。
| 項目 | 住居 | オフィス |
|---|---|---|
| 解約予告期間 | 1〜2 ヶ月前 | 3〜6 ヶ月前が一般的 |
| 原状回復範囲 | 通常損耗は貸主負担 | 借主が全面負担の特約が多い |
| 工事内容 | 軽微な補修中心 | スケルトン戻し・床・壁・天井全面 |
| 費用相場 | 数万〜十数万円 | 坪 3〜10 万円(規模で大きく変動) |
| 工事期間 | 1〜3 日 | 2〜6 週間 |
重要
オフィス賃貸借契約は事業用であり、消費者契約法・借地借家法の借主保護規定の一部が適用されません。「通常損耗は貸主負担」というガイドラインの原則も、オフィスでは契約書の特約が優先される実務になっています。契約書を最初に確認してください。
時系列チェックリスト
退去日を「Day 0」として、必要なタスクを時系列で整理します。
6 ヶ月前: 解約通知 + 契約書の再確認
- 賃貸借契約書を再読、解約予告期間と原状回復条項を確認
- **書面(内容証明推奨)**で解約通知を提出
- 工事完了の期限を確認(一般的に「明渡日まで」=賃料発生日まで)
- 移転先の選定・契約交渉を並行開始
注意
解約通知が口頭・メールのみだと、後から「受領していない」と言われるトラブルが発生します。配達証明付き内容証明郵便で送るか、最低でも書面を持参して受領印をもらってください。
5 ヶ月前: 原状回復範囲の確認 + 業者選定開始
- 入居時の図面・現況写真を社内資料から発掘
- 貸主・管理会社に原状回復範囲の確認依頼(書面で)
- 範囲確認後、複数の原状回復業者に現地調査を依頼
- 業者の見積もり項目・単価を比較
TIP
貸主指定業者がある場合でも、相見積もりを取る権利は契約書に明示禁止が無い限り認められます。指定業者の見積もりが相場の 2〜3 倍ということも珍しくないため、必ず比較してください。
4 ヶ月前: 業者決定 + 工事計画
- 業者を 1 社に決定、契約書を取り交わす
- 工事スケジュール表を作成(解体 → 床 → 壁 → 天井 → クリーニング)
- 電気・通信・電話・LAN の解約・移設手続きを開始
- 産廃処理の方針確認(業者が含めるか、別途手配か)
3 ヶ月前: 移転実務の本格化
- 引越業者の選定・見積もり
- 不要備品(什器・OA 機器)の処分計画
- 移転案内(取引先・郵便局・行政手続き)の準備
- 名刺・サイト・印刷物の住所変更準備
2 ヶ月前: 移転実行 + 残置物の整理
- 移転日の確定、社員への共有
- 不要備品の処分・買取手配
- 引越作業(移転先への搬入)
- 旧オフィスの鍵・カードキーの所在確認
1 ヶ月前: 原状回復工事の着工
- 工事開始日に立会い
- 工事中の進捗確認(週 1 回程度)
- 写真記録を取りながら進める
- 追加費用が発生する場合は書面で承認してから進める
注意
工事中の「ついでに直しておきました」「想定外の劣化が見つかりました」という追加請求は要注意。事前承認なしの追加工事費は支払義務が無いことがほとんどです。発見時点で必ず連絡を求めるよう契約書に明記しておきましょう。
退去当日: 立会い + 鍵返却
- 貸主・管理会社・業者の三者立会い
- 工事完了状況の確認、撮影
- 完了確認書に双方サイン
- 鍵・カードキー・リモコン類の返却
- 公共料金の最終検針
立会い当日のチェックポイント
立会い時に確認すべき項目を一覧化しました。事前にこのリストをプリントアウトして持参するとスムーズです。
| エリア | 確認項目 |
|---|---|
| 床 | 全面のクリーニング状態、設置跡が消えているか、原状回復済みか |
| 壁 | クロス張替済みか、ビス穴が補修されているか |
| 天井 | 照明器具の撤去跡、配線が整理されているか |
| OA フロア | 配線が完全撤去されているか |
| 給湯室 | シンク・コンロの状態、油汚れの除去 |
| トイレ | 便器・床の清掃、消臭の臭い |
| 共用部 | 廊下・エレベーターホールに搬出跡が無いか |
| 設備 | 元入居者が設置した造作物の撤去確認 |
TIP
スマホで全エリアを動画で撮影しておくと、後から「ここが原状回復されていなかった」と言われたときの反証資料になります。立会い者全員(貸主側・業者側)の同席が確認できる音声付き動画が理想です。
よくあるトラブル事例
ケース 1: 「指定業者でないと受け付けない」と言われた
契約書に「貸主指定業者による工事」と明記されていない限り、業者選定は借主の権利です。指定業者の見積もりが相場の 2 倍以上なら、相見積もりを根拠に交渉できます。
ケース 2: スケルトン戻しの範囲で揉めた
「入居時の状態に戻す」と「スケルトン(躯体)まで戻す」は意味が違います。入居時の写真と図面を持ち出して、どちらの状態を求められているのか書面で確認しましょう。
ケース 3: 工事完了後に追加請求が来た
事前承認なしの追加請求は原則として支払義務がありません。請求書受領後 14 日以内に「異議申立書」を内容証明で送付し、根拠の説明を求めます。
重要
揉めた場合の最終手段は、民事調停または**少額訴訟(60 万円以下)**です。オフィス退去の場合は金額が大きいので、調停が現実的。各地の簡易裁判所で 1〜2 万円で申立てできます。
まとめ
オフィス退去は段取り 8 割です。6 ヶ月前から動き始めれば、業者選定・見積もり比較・移転実務すべてに余裕を持って対応できます。
- 6 ヶ月前: 契約書再確認 + 解約通知
- 5 ヶ月前: 原状回復範囲確認 + 業者見積もり
- 4 ヶ月前: 業者決定 + 移転計画
- 3 ヶ月前: 移転実務開始
- 2 ヶ月前: 移転実行
- 1 ヶ月前: 原状回復工事
- 当日: 立会い + 鍵返却
「退去日まで時間がある」と思っているうちに、あっという間に 3 ヶ月前になります。契約書の解約予告条項を今すぐ確認することから始めてください。
